仮面王子とのメモワール


「目的も理由も知らないし、何より唄があんなに好きだった人だから悪くは言いたくない。けど、あたしは彼のこと許してないよ」


空を真っ直ぐに見上げて、未央はそう言った。


「うん。私も、許してはいないよ」


未央の言うことだってもちろん当然だと思う。


実際、私だって律紀を許したわけじゃない。


ましてや、ただの友達になんてなろうとも思わない。



けど。けどね、未央。



「でもやっぱり、気になっちゃうよ」


それが、私の本音だった。


だって、気にしない方が無理だ。


あんなに忘れたかった人が、隣にいる。

意識しない方が可笑しな話。



「……まぁ、そうなるよね」

少し困ったように、未央は笑った。



「最初に早川くんの本性を知ったときも、唄言ってたよね。『変な人だけど気になる』って」

「え、そうだっけ?」

「そうそう。あの王子がそんな性悪だなんてカミングアウトされたときだったからよく覚えてるよ」

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