仮面王子とのメモワール
初めてこれを読んだときは意味がわからなくて、混乱して、ただただ泣いたっけ。
もう見たくもなかった手紙。
けど、どうしても捨てられなかった。
「……ほんっと、意味わかんない」
勝手にいなくなったくせに、急に戻ってきた律紀にも。
手紙もロクに捨てられず、意識しまくっている自分にも。
どうしようもなく、イライラする。
『唄』
「……っ」
あの優しい声が、また私を呼ぶ日が来るなんて。
夢が現実か俄かに信じられなかったけれど、もう受け入れた。
律紀が、いる。
手元にある手紙を再び缶箱に戻すと、元にあったように引き出しの奥へと仕舞い込んだ。
「……これからどうしよう」
ポツリと呟いた言葉は、誰にも拾われずに溶けていった。