仮面王子とのメモワール
ここにいたのは私の方が先だった。
それなのに彼ら2人がやって来たものだから、奥の本棚の裏に隠れて今に至る。
女の子の啜り泣く声が聞こえて、それから出て行ってしまった。
「……はぁ〜」
思わず出たのであろうため息が、直後に聞こえた。
本当の王子様ならそんなめんどくさそうな表情にはならないけど、彼は違う。
思わず笑いそうになってしまって、必死に堪えた。
だって、中学の頃も告白現場に何度か遭遇したことはあるけど、あの頃と状況が全く同じなんだもん。
だから、油断していた。
「おいコラ、さっさと出てこい」
「……っ!?」
律紀の声が、確かに私の方に飛んできたから。
まさか、私以外にも誰かいる?
そんなことを考えたけれど、もしいたとして、律紀のこの口調はおかしい。
こんな口の利き方をする相手は、この学校ではたぶん、私だけ。