仮面王子とのメモワール
パラパラと中身をめくって、「ふーん」と呟く。
「これ、もう返すやつ?」
「え、そうだけど……」
「なら、次はー……あぁ、コレにしとけ」
近くにあった本棚から1冊取り出した律紀は、それを私の手元に持ってきた。
相変わらず横暴。
思わず手に取って表紙を見ると、「あ」と小さく声が漏れる。
その瞬間を、コイツは見逃さない。
「好きだろ?そういうの」
ニッと笑った彼に、まんまとしてやられたと思った。
私の好きなファンタジーものの小説。
表紙に書かれた著者名が、以前読んでハマった別の作品の著者と同じ人だった。
……あぁもうほんと、厄介。
素直にコクリと頷くと、ふはっと笑う声が聞こえた。