仮面王子とのメモワール
もう少しで昼休みが終わるというのに、律紀はまだ教室には戻ってきていない。
「ほんっと、何考えてんのかわかんないね。早川くん」
それを良いことに、私、というか主に未央が言いたい放題。
私はといえば、正直この借りて来た本が気になってしょうがなかった。
……私の好み、覚えてたんだね。
最初の1行を読んだだけでも、早く先を読みたくて仕方なくなっている。
「お、それ今日借りて来た本?」
背後からシュウちゃんの声と共に手が伸びて来たのは、そんなとき。
びっくりしながらも、シュウちゃんが突然現れるのはよくあることだからか、もうだいぶ耐性はついていた。
「うわ、相変わらず難しそう」
「そんなことないよ。シュウちゃんだって読めばきっと楽しいと思う」
後ろから私の背中越しにパラパラと数ページめくって、手が止まる。