仮面王子とのメモワール
人気者の王子様
未央の釘を刺すような発言から数日。
あの日以来、律紀と2人きりで話すことは再びなくなった。
彼のオススメで借りた本はもうとっくに読み終わって、今はもう別の本を読んでいる。
「蓮見さん、コレ落ちたよ」
「あ。ありがとう、早川くん」
うっかり落とした消しゴムを、隣の席の王子様が爽やかな笑顔付きで拾ってくれた。
……我ながら、こういう表面上取り繕った関係に違和感しかない。
「はぁ〜……。早川くんってホント王子様みたい」
「カッコよくてなんでもできて、しかも優しさの塊なんて……。現実にいるのが嘘みたいだよね〜」
クラスの女の子たちがヒソヒソと話しているのが聞こえて、思わず笑いそうになるのを必死で堪えた。
残念ながら、それは騙されている。
嘘みたい、じゃない。嘘だ。