仮面王子とのメモワール
王子様の葛藤
( 律紀 side )
「古河さん。悪いけど、彼女は俺が連れて帰るよ」
俺を見て驚いた様子の彼女に、そう伝えた。
隣には樋山。
そして目の前には、俺に背を向けてヘッドホンをつけている唄がいる。
「……早川くん、今さら態度変えてももう無理あると思うけど」
俺の言葉への返事をすることもなく、古河が言ったのはそんな内容だった。
大方、今さっき少し素を出してしまったことについてだろう。
例え見られていなかったとしても、彼女なら唄からどうせ話は聞いてるんだろうし。
まぁ、でも。
「古河さんには関係ないよ」
唄以外の存在に、わざわざ自分の素を全面に出すつもりもない。
「あ、そ」
彼女はそれ以上何も言わなかった。
俺の連れて帰る発言に対しても、許可は出たということだろう。