仮面王子とのメモワール
「ったく、だから天気予報確認したってのに」
「……あんなのでわかるわけないじゃない」
「お前なぁ。どんだけ可愛げねぇんだよ」
ツンケンしてるくせに、手は不安そうに力強くペットボトルを握りしめている。
それがわかっているからこそ、こんなことなら無理矢理引っ張ってでも帰らせればよかったと後悔した。
物心ついたときから何故か雷だけはダメだったと、中学の頃に本人から聞いた。
それはどうやら治ってはいないらしい。
雷の音も光も、コイツは恐怖で震えて動けなくなる。
「少し休んだらタクシー捕まえて帰るぞ。ヘッドホンはそのまま持ってていいから」
「……ん、ありがと」
「急にしおらしくなるなよ。調子狂う」
素直に受け取ればいいものを、どうしてもコイツの前ではそんな嫌味しか出てこない。
だって、無理だろ。
今更どんな顔して会えばいいかなんて、未だに答えは見つかってない。