仮面王子とのメモワール


そう言って笑ってみたけれど、そんな私とは裏腹に、シュウちゃんはびっくりするくらい真剣な顔を浮かべている。


そして、私の頭を撫でて。


「そりゃ、好きな子のことなら誰だって心配だろ?」

「……っ!」


サラッと。本当にサラッと、シュウちゃんは私にそう言ったのだ。



ドキンと心臓が音を立てるのは仕方ないことだと思う。


もう……何度目かわからないシュウちゃんからの告白に、私は顔を赤らめる以外の方法を知らない。



「だから、心配くらいさせてくれよ。な?」


ニッと笑うシュウちゃんは、本当にずるい。


私が答えを出しても出さなくても、いつもこうして気持ちをぶつけてくれる。


それが嬉しくも申し訳なくもあって、私は何も言えなかった。



……私の中に止まった、あの想いがなければ。

もし前に進めていたら、私はシュウちゃんの手を取って、隣で笑うこともできたかもしれないのに。


< 9 / 87 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop