揺れる水色*
 六月の中旬。いつものように彼が乗ってきた。今日も、人をかき分けて後ろの方へ行こうとしていたけれど、行けなくて、扉のすぐ近くにいる私と向かい合わせる感じになった。

 すぐ近くに彼がいる。彼は身長が私よりも二十センチくらいかな?高くて、至近距離にいると、目を合わせるには見上げないといけない。けれども私は見上げる事が出来なかった。「同じ中学でしたよね?」とか気軽に話しかければ良いのに。

 そんな風に至近距離で立つようになったのは、この日だけではなかった。それから毎日。

 話しかけるタイミング、完全に失った。
 クラスが違ったし、私の事、記憶にないのかな?って思ったから、このまま話さなくてもいいかなってなって。

 でもなんだろう。このまま近くにいたい。降りる停留所まで着かないで欲しいって思う。一緒にいられる約十五分が短く感じる。なんだか不思議。
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