先輩からの卒業
……いや、覚えてないのか。
確か事故直前の記憶は曖昧だと言っていた。
あの日、チョコ手渡したことまでは話していない。
まぁ、先輩にとってバレンタインというものが憂鬱なイベントになっていないのならそれは喜ぶべきことだ。
この日は休み時間になるたびに、女の子達が先輩の元を訪れた。
下級生は先輩がサッカー部だった頃のことを知らない。
それでも、衰えない先輩人気。
放課後になっても、先輩はあちこちで呼び止められていた。
もうすぐ卒業。この機会に告白する女の子もきっと多いのだろう。
私には関係ないこと。そう思いながらも、私はその場面を直視することができなかった。
加恋先輩と別れてから、誰からの想いも受けとならなかった先輩。
だけど、今日は違うかもしれない。
もう先輩を想うのはやめる。
先輩から卒業する。
そう決めたのに、またうじうじとそんなことを考えてしまう自分が嫌いだ。
私は先輩の幸せだけを望んでいればそれでいい。