先輩からの卒業
「浪川くんから……。でも、嘘つきって……。別に言う必要がないから言わなかっただけです」
私と先輩の間柄では別に報告不要な話だ。
先輩だって友達の妹からのそんな報告を必要としていないだろう。
それなのに、嘘つき呼ばわりされるのは少し納得がいかない。
「言う必要がない……か」
先輩はそう言うと床へと視線を落とす。
「だって何でも報告するような関係じゃないですよね。私達って」
言っていることは何も間違っていないのに、改めて先輩との関係を思い知り胸がズキズキと痛む。
というか、先輩はこんな話をして何が言いたいのだろう。
私の言葉のあと数秒の沈黙を挟み、
「……あいつなら奈子を笑顔にさせてやれるのかな?」
先輩がそうポツリとつぶやいた。
「えっ……?」
「あれからお互い事故の話は避けてきたよな」
「せ、先輩……。急にどうしたんですか?」
事故という言葉に動揺が隠せず声が震える。
あの頃、病室に行くたびに謝り続ける私に先輩は「もう謝らなくていいから。な?」そう繰り返した。