先輩からの卒業
あの事故の日以来、罪の意識からか先輩に対して上手く笑えなくなった。
先輩への気持ちを消そうと思うと不器用な私は感情さえも隠すようになっていった。
でも、これでいいんだ。ずっとそう思ってた。
だけど、私のその行動さえも先輩を苦しめていたのだろうか?
気づかないうちに目からは一粒の涙が溢れ落ち、頬を伝う。
私が泣くのは間違っている。
そうわかっているのに、溢れ出す涙は一向に止まる気配をみせず、私は服の袖で無理やり涙を拭う。
「泣かせてばっかでごめん」
先輩はそう言うとゆっくり私の元へと近づきその涙を拭った。
その手つきがあまりにも優しくて、また頬を涙が濡らす。
だけど、先輩の次の言葉でその涙はパタリと止まった。
「俺、今度……加恋と会うんだ」
「へ……?」
久々に先輩からその名前が発せられる。
さっきとは違う、胸を抉るような痛みが私を襲う。
「もしかしたら、より戻そうって話かも。……だから、奈子も気にせず自分の気持ちを大切にすればいいから」
「先輩……」
「そういうことだから、卒業まであと少しよろしくな」
先輩はそう言い残すと私の部屋から出ていった。
先輩に幸せになってほしいのに“加恋先輩と会わないで”そんなことを思う私は最低だ。
結局、自分のことしか考えていない。
先輩は私の幸せを考えてくれたのに。
私だけが、あの頃から何一つ変わってないんだ。