先輩からの卒業
「せ、先輩!?」
私の手を取り歩き出した先輩は一切後ろを振り返ろうとはせず、気づいたら2人して人気のない東校舎へと来ていた。
5限目が始まったせいか、他の生徒がいる気配はない。
立ち止まってもまだ繋がれたままの手。
先輩は背中を向けたままでどんな表情をしているのかわからない。
「あの、先輩」
続く沈黙に不安になって、自分から声をかける。
私の声に振り向いた先輩の表情は、怒りと悲しみ色んな感情が混じっていて、一言では言い表せなかった。
「なんで浪川といるのに泣いてるの」
先輩の第一声はそれ。
ここに来た理由なんてものはすっ飛ばして。
浪川、浪川って先輩は私が浪川くんといれば常に笑顔だとでも思っているのだろうか?
「別にこれは何でもなくて」
せっかく先輩と上手く話せているのに余計な心配をかけたくない。
「泣いてるのに何もないわけないじゃん」
「これはちょっと目にゴミが入っただけです……。それよりもほら、先輩!授業始まっちゃいましたよ戻りましょう」
握られたままの手を引き、歩き出そうとすると逆に強い力で引き戻された。