ABYSS〜First Love〜
ユキナリ
sideB-4
あの海を引き上げて
オレのリオへの想いはますます強くなった。
それでも顔を見なければ心を乱されることもなかった。
このまま時間が解決してくれると思った。
見合いの日が近づいてオレは全てを諦めることにした。
見合いといってもかしこまったものではなく
ホテルのラウンジで当人同士で待ち合わせした。
相手はまだ来てないようだった。
オレは相手の顔を知らないが
相手はオレのことを知っているらしかった。
オレはアイスコーヒーを頼んで彼女が来るのを待った。
グラスが汗をかき始めた頃
「ユキナリさんですか?」
と声をかけられた。
顔を上げると信じられない相手が立っていた。
「え?」
「久しぶりね。ユキナリさん。」
見合いの相手はなんとあのサチだった。
「何で?
知ってたのか?オレが見合いの相手だって。」
サチはオレのことを調べてあの海に来たのだと白状した。
別荘はサチの家のものではなく
借り物であの夏だけ知り合いに貸してもらったそうだ。
サチとは告白される前に断って
その高い鼻をへし折ってしまい
それからは険悪だった。
「今日は断れないですよね?」
サチはまだ怒っている様子だったが
オレはこの見合いを断るわけにはいかなった。
「サッちゃんはオレでいいの?」
「あの時は本当に腹立ちましたけど
でも私に断られたら損するのはユキナリさんの方ですよね?
謝罪してくれれば許してもいいですよ。」
立場は一気に逆転した。
「これは政略結婚ですから愛なんて必要ありませんから。」
サチはクールに見えたが実は粘着質だ。
あの時のことはきっと忘れないだろう。
オレは最初から印象が悪すぎる。
「これからよろしくお願いします。」
それでもサチはオレと結婚するつもりでいる。
最初から幸せなんて求めてなかったし
サチの性格は結構把握できてる。
まぁ何とかやっていけるだろうと思った。
「あの…結婚するにあたって何か条件はありますか?」
一応それを聞いてみる。
愛のない結婚だが、相手を傷つけるのは気が進まなかった。
「愛さなくてもいいから浮気はしないで。」
サチの条件はそれだけだった。
オレたちは顔合わせをして
結婚を前提に交際することになったが
オレの心は未だリオに支配されていた。
あんなに情熱的にオレを愛してくれるのは
これから先もリオだけだと思った。
サチとは一緒に食事をしたり
コンサートに行ったり
時々会ってお互いを知る時間を作った。
「もしかして好きな人がいるの?」
そんな風に突然サチに聞かれて
オレは返事に困った。
「あ、いや、いない。」
リオのことが頭に浮かんでそう返事をしたが
サチにはわかってしまったみたいだった。
「どんな女なの?」
普通はそう聞くだろう。
「好きな女なんか居ないよ。」
好きな女はいない。
オレは嘘を言わないで済んだ。
「わかんない人ね。」
サチはオレにずっと腹を立てていて
もっと気分が悪くなると思ったのか
それ以上は詮索しなかった。
どちらにしろもし調べられたとしても
オレからは何も出ない。
どんなすごい興信所を使ったところで
心の中までは調べられないだろう。
オレはリオと隠れて会ってるわけでもないし
浮気と言われるような行動はしていない。
逢いたくても逢わなければいつかは忘れられる。
そんな時、一冊の雑誌がオレの心を酷く動揺させた。
サーフィンの雑誌の広告にリオがいたからだった。
リオはあの頃とは別人みたいに垢抜けて
とにかくカッコよかった。
「あー…ダメだ。」
そんな言葉が思わずオレの口から漏れた。
逢いたくてたまらない。
あの強引なファーストキスを思い出してしまう。
オレはあの記憶だけで
いつだってリオに気持ちを持っていかれる。
オレは紙の中のリオの身体に触れた。
リオの体温が恋しかった。
「好きだよ、リオ…。」
そのリオに向かってそう言った。
生身のリオには届かないから言える。
次の週末オレはあの海に1人でやってきた。
誰にも告げず
ただリオが波に乗るのを見にきた。
手を伸ばせば届く距離なのにオレにはそれが出来なかった。
結局遠くからリオを見ただけで帰った。
まるでストーカーみたいだ。
行かなければよかったと思った。
リオへの気持ちがますます強くなって
心が壊れそうだった。
オレのリオへの想いはますます強くなった。
それでも顔を見なければ心を乱されることもなかった。
このまま時間が解決してくれると思った。
見合いの日が近づいてオレは全てを諦めることにした。
見合いといってもかしこまったものではなく
ホテルのラウンジで当人同士で待ち合わせした。
相手はまだ来てないようだった。
オレは相手の顔を知らないが
相手はオレのことを知っているらしかった。
オレはアイスコーヒーを頼んで彼女が来るのを待った。
グラスが汗をかき始めた頃
「ユキナリさんですか?」
と声をかけられた。
顔を上げると信じられない相手が立っていた。
「え?」
「久しぶりね。ユキナリさん。」
見合いの相手はなんとあのサチだった。
「何で?
知ってたのか?オレが見合いの相手だって。」
サチはオレのことを調べてあの海に来たのだと白状した。
別荘はサチの家のものではなく
借り物であの夏だけ知り合いに貸してもらったそうだ。
サチとは告白される前に断って
その高い鼻をへし折ってしまい
それからは険悪だった。
「今日は断れないですよね?」
サチはまだ怒っている様子だったが
オレはこの見合いを断るわけにはいかなった。
「サッちゃんはオレでいいの?」
「あの時は本当に腹立ちましたけど
でも私に断られたら損するのはユキナリさんの方ですよね?
謝罪してくれれば許してもいいですよ。」
立場は一気に逆転した。
「これは政略結婚ですから愛なんて必要ありませんから。」
サチはクールに見えたが実は粘着質だ。
あの時のことはきっと忘れないだろう。
オレは最初から印象が悪すぎる。
「これからよろしくお願いします。」
それでもサチはオレと結婚するつもりでいる。
最初から幸せなんて求めてなかったし
サチの性格は結構把握できてる。
まぁ何とかやっていけるだろうと思った。
「あの…結婚するにあたって何か条件はありますか?」
一応それを聞いてみる。
愛のない結婚だが、相手を傷つけるのは気が進まなかった。
「愛さなくてもいいから浮気はしないで。」
サチの条件はそれだけだった。
オレたちは顔合わせをして
結婚を前提に交際することになったが
オレの心は未だリオに支配されていた。
あんなに情熱的にオレを愛してくれるのは
これから先もリオだけだと思った。
サチとは一緒に食事をしたり
コンサートに行ったり
時々会ってお互いを知る時間を作った。
「もしかして好きな人がいるの?」
そんな風に突然サチに聞かれて
オレは返事に困った。
「あ、いや、いない。」
リオのことが頭に浮かんでそう返事をしたが
サチにはわかってしまったみたいだった。
「どんな女なの?」
普通はそう聞くだろう。
「好きな女なんか居ないよ。」
好きな女はいない。
オレは嘘を言わないで済んだ。
「わかんない人ね。」
サチはオレにずっと腹を立てていて
もっと気分が悪くなると思ったのか
それ以上は詮索しなかった。
どちらにしろもし調べられたとしても
オレからは何も出ない。
どんなすごい興信所を使ったところで
心の中までは調べられないだろう。
オレはリオと隠れて会ってるわけでもないし
浮気と言われるような行動はしていない。
逢いたくても逢わなければいつかは忘れられる。
そんな時、一冊の雑誌がオレの心を酷く動揺させた。
サーフィンの雑誌の広告にリオがいたからだった。
リオはあの頃とは別人みたいに垢抜けて
とにかくカッコよかった。
「あー…ダメだ。」
そんな言葉が思わずオレの口から漏れた。
逢いたくてたまらない。
あの強引なファーストキスを思い出してしまう。
オレはあの記憶だけで
いつだってリオに気持ちを持っていかれる。
オレは紙の中のリオの身体に触れた。
リオの体温が恋しかった。
「好きだよ、リオ…。」
そのリオに向かってそう言った。
生身のリオには届かないから言える。
次の週末オレはあの海に1人でやってきた。
誰にも告げず
ただリオが波に乗るのを見にきた。
手を伸ばせば届く距離なのにオレにはそれが出来なかった。
結局遠くからリオを見ただけで帰った。
まるでストーカーみたいだ。
行かなければよかったと思った。
リオへの気持ちがますます強くなって
心が壊れそうだった。