ABYSS〜First Love〜
その後、陽が落ちた頃、
オレは熱を出してぶっ倒れた。
ユキナリがまた夜に来るって言ったことを思い出したが
頭がぼーっとしてユキナリのことはそれ以上考えられなかった。
しばらく眠っているとドアを開ける音がした。
泥棒に入られたのかと思って反射的に飛び起きた。
「え?何?」
立ってたのはユキナリだった。
「あ、鍵開けっぱなしだった?」
「あー、この鍵、持って帰った。
夜来るって言ったろ?
なんか食った?
てゆーか具合悪いか?ひどい顔してるけど…」
ユキナリが俺の額に突然手を当てる。
オレの心拍数が半端なく上がってる気がして
ユキナリの手を避けた。
「熱あるなぁ。傷痛む?」
ユキナリは急に出て行って
近くのコンビニで買い物してきた。
「これ飲んで寝てろ。
抗生物質出てたろ?飲んだか?」
差し出したのはスポーツドリンクで
レトルトのお粥を置いていった。
「悪いな。
まだ仕事残ってるからまた後で様子見に来る。」
オレがキスしたことなんて忘れてるみたいに普通に優しかった。
「ユキナリさん、ありがとうございます。
オレもう寝るから今日はもう大丈夫です。」
なぜかよそよそしい喋り方をした。
「何だよ、敬語とか気持ち悪い。
大丈夫か?お粥あっためるから食え。」
その夜、オレは何も食べられず薬を飲んで眠った。
額のタオルが冷却シートに代わっていた。
ユキナリが夜中にもう一度様子を見にきたんだとわかった。
翌朝は熱も下がってユキナリが置いて行ったお粥をもう一回温めて食べた。
ユキナリは朝早くやって来た。
「おう、どうだ?」
オレの額にまたさりげなく手を当てる。
シャワー浴びて来たのか髪が濡れていた。
そんなことでイチイチときめく自分が信じられなかった。
「もう大丈夫だよ。」
「んじゃまた病院行こう。
消毒に来いって言ってたろ?」
「別に消毒なんて行かなくていいよ。
仕事行けよ。」
「オウスケさんに連れていけって言われたんだ。
それに熱も出たし、心配だろ?」
ユキナリは自分の肩にオレの左手を掛け
オレを立ち上がらせる。
「イテッ!」
激痛が走ってユキナリの胸に手をかけた。
ユキナリがその手を取ってオレたちはまたあの時みたいに目が合った。
「ユキナリさん…昨日のこと覚えてるだろ?」
そこまで言いかけるとユキナリがオレの目を見てオレの言葉を遮るように言った。
「ワケわかんねぇから黙って。」
正直、嫌われたんだと思った。
オレはユキナリの目を見てられなくて下を向いた。
「お前さ…何やってくれてんだよ。
病んでるから黙ってたけどさ
ワケわかんねえし、どういうつもりなワケ?」
完全に怒ってる。
「オレだってわかんねえよ。
気がつくといつも目で追ってて…サッちゃんといちゃついてるとイライラして…
何か知らないけどこんな気持ちになったの初めてで…」
「お前、オレが好きなの?
それとも男が好きなの?」
ストレートに聞かれると言葉に詰まってしまう。
自分だって何が何だかわからなかった。
今まで誰も意識したことないし、
女の子を好きになったこともないけど
男を好きなわけでも無かった。
ただそこにいるユキナリだけがどうしても気になるだけだった。
「男じゃなくてユキナリさんだからだと思う。」
「オレは…よくわかんねぇけど…
お前がいきなりキスしてきて…
ワケわかんな過ぎて眠れなかったよ。
オレさ、男に恋した事もねぇし、そういう感情わかんねぇんだよ。
だからお前にどう接していいかもわかんない。」
「ユキナリさんは人を好きになったことあるの?」
「ねぇよ!
だいたいお前なぁ
オレが好きなんじゃなくて男が好きなんじゃねぇの?
オレじゃなきゃダメってワケじゃ…」
そこまで言いかけてユキナリは急に黙った。
酷いこと言ってるって気が付いたんだと思った。
俺の顔を見て
「朝からする話じゃねぇな。」
と言ってオレに肩を貸した。
洗い立ての髪の匂いがオレの気持ちを掻き立てる。
好きだと思った。
だけどそれ以上はもう踏み込めなかった。
一度間違いを犯すと次はもう後がないと思って
オレは素直にユキナリの肩を借りるしかなかった。
オレは熱を出してぶっ倒れた。
ユキナリがまた夜に来るって言ったことを思い出したが
頭がぼーっとしてユキナリのことはそれ以上考えられなかった。
しばらく眠っているとドアを開ける音がした。
泥棒に入られたのかと思って反射的に飛び起きた。
「え?何?」
立ってたのはユキナリだった。
「あ、鍵開けっぱなしだった?」
「あー、この鍵、持って帰った。
夜来るって言ったろ?
なんか食った?
てゆーか具合悪いか?ひどい顔してるけど…」
ユキナリが俺の額に突然手を当てる。
オレの心拍数が半端なく上がってる気がして
ユキナリの手を避けた。
「熱あるなぁ。傷痛む?」
ユキナリは急に出て行って
近くのコンビニで買い物してきた。
「これ飲んで寝てろ。
抗生物質出てたろ?飲んだか?」
差し出したのはスポーツドリンクで
レトルトのお粥を置いていった。
「悪いな。
まだ仕事残ってるからまた後で様子見に来る。」
オレがキスしたことなんて忘れてるみたいに普通に優しかった。
「ユキナリさん、ありがとうございます。
オレもう寝るから今日はもう大丈夫です。」
なぜかよそよそしい喋り方をした。
「何だよ、敬語とか気持ち悪い。
大丈夫か?お粥あっためるから食え。」
その夜、オレは何も食べられず薬を飲んで眠った。
額のタオルが冷却シートに代わっていた。
ユキナリが夜中にもう一度様子を見にきたんだとわかった。
翌朝は熱も下がってユキナリが置いて行ったお粥をもう一回温めて食べた。
ユキナリは朝早くやって来た。
「おう、どうだ?」
オレの額にまたさりげなく手を当てる。
シャワー浴びて来たのか髪が濡れていた。
そんなことでイチイチときめく自分が信じられなかった。
「もう大丈夫だよ。」
「んじゃまた病院行こう。
消毒に来いって言ってたろ?」
「別に消毒なんて行かなくていいよ。
仕事行けよ。」
「オウスケさんに連れていけって言われたんだ。
それに熱も出たし、心配だろ?」
ユキナリは自分の肩にオレの左手を掛け
オレを立ち上がらせる。
「イテッ!」
激痛が走ってユキナリの胸に手をかけた。
ユキナリがその手を取ってオレたちはまたあの時みたいに目が合った。
「ユキナリさん…昨日のこと覚えてるだろ?」
そこまで言いかけるとユキナリがオレの目を見てオレの言葉を遮るように言った。
「ワケわかんねぇから黙って。」
正直、嫌われたんだと思った。
オレはユキナリの目を見てられなくて下を向いた。
「お前さ…何やってくれてんだよ。
病んでるから黙ってたけどさ
ワケわかんねえし、どういうつもりなワケ?」
完全に怒ってる。
「オレだってわかんねえよ。
気がつくといつも目で追ってて…サッちゃんといちゃついてるとイライラして…
何か知らないけどこんな気持ちになったの初めてで…」
「お前、オレが好きなの?
それとも男が好きなの?」
ストレートに聞かれると言葉に詰まってしまう。
自分だって何が何だかわからなかった。
今まで誰も意識したことないし、
女の子を好きになったこともないけど
男を好きなわけでも無かった。
ただそこにいるユキナリだけがどうしても気になるだけだった。
「男じゃなくてユキナリさんだからだと思う。」
「オレは…よくわかんねぇけど…
お前がいきなりキスしてきて…
ワケわかんな過ぎて眠れなかったよ。
オレさ、男に恋した事もねぇし、そういう感情わかんねぇんだよ。
だからお前にどう接していいかもわかんない。」
「ユキナリさんは人を好きになったことあるの?」
「ねぇよ!
だいたいお前なぁ
オレが好きなんじゃなくて男が好きなんじゃねぇの?
オレじゃなきゃダメってワケじゃ…」
そこまで言いかけてユキナリは急に黙った。
酷いこと言ってるって気が付いたんだと思った。
俺の顔を見て
「朝からする話じゃねぇな。」
と言ってオレに肩を貸した。
洗い立ての髪の匂いがオレの気持ちを掻き立てる。
好きだと思った。
だけどそれ以上はもう踏み込めなかった。
一度間違いを犯すと次はもう後がないと思って
オレは素直にユキナリの肩を借りるしかなかった。