ABYSS〜First Love〜
リオ

sideA-epilogue

突然ユキナリが来て何が何だかわからなくなった。

ユキナリにもう迷惑かけたくないって思ってたけど、顔を見た瞬間、オレはまたユキナリへの気持ちが抑えられなくなった。

ユキナリはすごく怒ってたけど
すぐに許したくれた。

逢いに来てくれるなんて夢みたいだったけど
申し訳なくて、ユキナリに触れることさえ戸惑った。

「オレの部屋に来る?」

ユキナリは自分が泊まってるホテルにオレを呼んだ。

「あ、…うん。」

オレはユキナリと寝たらきっともう気持ちを誤魔化せない。

「やっぱやめとく。
今日はもう遅いし…ユキナリはいつまでここにいるの?」

「明日帰る。」

「そうなんだ。
今はどこに住んでるの?
まだ家賃40,000のとこ?」

「オレはもう都内に住んでない。

お前の実家のあるあの海の近くで店やってる。」

「え?」

そんな話を聞いたらオレはあの場所にまた帰りたくなる。

ユキナリ、ユキナリ、ユキナリ…

心の中でずっとユキナリの名前を叫んでた。

「で、部屋来ねーの?

別に嫌ならいいよ。

もうこれ以上話したくないってことだよな?」

「そうじゃなくて…
オレたち話だけで済む?

オレ…ユキナリと二人っきりになったら
色々ダメだってわかってるから。」

「ダメって何が?」

「何がって…」

ユキナリは平気なんだろうか?

二人きりになったらオレはユキナリにキスをする。

最初にキスしたあの時みたいに抑えられなくて
強引なキスをユキナリにするだろう。

「お前さ、まさかオレがお前とそういうことしたいとか思ってるって思ってんの?」

自分の顔が赤くなってくのがわかる。

「ふざけんなよ。
簡単に捨てたヤツと簡単に寝られるほどオレ…軽くねーから。」

「オレ、二人になったらユキナリにキスする。
そんで押し倒すよ。」

「は?」

ユキナリはそれ以上何も言わなかった。

呆れられたってそれが本音だった。

「それってさ、オレの身体が目当てなワケ?

それともオレにまだ惚れてるワケ?」

オレはどう答えていいか迷った。

でもやっぱりユキナリに本当の気持ちを伝えたかった。

「自分勝手だってわかってる。

迷惑かけて、合わせる顔なくて…

ユキナリがオレのせいで後ろ指さされたら本当嫌なんだけど…
オレがいなきゃユキナリは普通の幸せを手に入れて
子供とか家庭とか持てるのに…
だからユキナリのそばにいるのはダメだってサッちゃんに言われてわかったんだけど…

でもやっぱり好きで…

会わないでいたら我慢できるって思ってたんだけど…
3年経っても何も変わんなくて…
毎日ユキナリに逢いたくて…
でも我慢して…
本当ダメだってわかってるけど…オレは…
どうしてもユキナリが忘れらんない。」

その瞬間ユキナリに抱きしめられた。

オレはもうどうしようもなくて思わずユキナリにキスしてしまった。

「リオ…バカだな。

オレもずっとお前と同じ気持ちだよ。

お前が好きで…好きで…もう離れたくないんだ。」

夢かと思った。

そしてオレたちはその夜を一緒に過ごして
オレはここから地元にユキナリの居るあの街に帰ることにした。

そしてオレはこの街で小さなカフェ兼サーフショップを開いて
時には子供たちにサーフィンを教えたり、交代で海水浴の監視をしたり
オウスケさんの海の家を手伝ったりしながら
ユキナリとのんびり暮らしてる。

オレとユキナリが恋人同士だってこの界隈の人は多分知ってる人も居るかも知れないが
誰に噂されようが好奇の目で見られようが
オレにはわかってくれる仲間がいて
ユキナリがいる。

それだけで幸せだった。




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