妖怪探偵☆雪女の雪華が参る!! 「俺の嫁になれ」と美鬼の茨木童子に迫られちゃって、私そんなの困ります! ――の巻。
第20話 山の鬼婆
「おい、君達。こんなとこにどうして?」
「きゃあっ。……って茨木先輩!」
振り返ると、TシャツにGパンでラフでもキマってる姿の茨木先輩がいた。
私の前には、銀星と緋勇くんがすっと進んで立って身構えて守ろうとしてくれてる。
――茨木先輩なら、大丈夫。
だよね?
生徒会長だもん。鬼だけど危害は加えないはず。
「なんでアンタがいるんだ?」
「雪華さんに銀星くん。それに……」
「俺は四神獣が一人、朱雀の緋勇だ。その頭の角は鬼族、腕に嵌《は》めてる星を彫《ほ》った輪のアクセサリーは酒呑童子の配下の印。稲荷神社眷属の神狐銀翔から聞いている。それにこの妖気いつか感じた事がある。……お前は鬼の副総統頭《ふくそうとうがしら》、茨木童子だな」
「フッ、……朱雀ね。うん、俺も聞いてるよ。酒呑鬼組《しゅてんおにぐみ》と稲荷神社の眷属衆は和平交渉をする手はずだったよね。俺は目下休眠中の酒呑童子に代わって山の鬼婆に和平の了承を得に来たんだ」
「「和平交渉?」」
私は稲荷神社の眷属と鬼の一族が和平交渉をするなんて、聞いていなかった。
私と同じように銀星も驚いてる顔をしてるから、銀星も知らなかったんだね。
「雪華も銀星もまだ聞かされてなかったか? 稲荷神社の眷属と妖怪の中でも力の長《た》ける鬼族が同盟を組むらしいな」
「鬼族には派閥があって、今の我々は酒呑童子様を欠いている。最近の酒呑鬼組は昔と違って戦を望まないからね。いざという時のために稲荷神社の眷属達とは協力関係を結び、仲良くしとこうって算段さ。雪華さん、君達はひょうたんを探しに?」
「河童の凪ちゃんがさらわれたの。銀星の嗅ぎ取った匂いから、この辺に小河童もいるはずだって」
「へぇ。神狐の鼻はとびきり利くんだな」
「茨木先輩! その鬼婆に僕達も会わせてもらえませんか」
「……良いけど。君達が会って大丈夫かな? 鬼婆は女性や人間の子供の魂が大好物なんだ」
「人の子の魂を喰らう鬼婆……。まだそんな事をする奴が風森町にいたのか。数年前、俺が銀翔と退治した妖怪も魂を喰らう非道な奴だったが」
「俺は詳細は知らない。俺が茨木童子の息子として風森町に生まれたのはごく浅い歳月なのでね。父親から聞いた話では、鬼婆はずーっと姿を変えながらこの地に棲んでいるという。魂を喰らわずとも生きられるが、大好物な物は食いたくなるんだろ。酒呑童子様が酒を絶てないように。鬼婆が魂を欲したら、雪華さんが危ない目に合うかもしれない」
ゾクゾクゾク〜ッと私の全身を悪寒がはしった。
手紙から霊気がしたのは、鬼婆が子供達や女の人の魂を体から抜いて食べたから?
「悪いことは言わない。こんな危ないトコに立ち入るんじゃない。河童の娘の事なんか放っといて、君達はいい加減酒呑童子様のひょうたんを探し出したらどうなんだい?」
私はムカ〜ッときたぁ!
「私は凪ちゃんを救いたいの。友達を放っておくなんて出来ないもん。それに私達は妖怪探偵! 危険だって顧みずに踏み込むのが、妖怪探偵なんだから」
「雪華……。僕は少なからずその山の鬼婆と小河童、それに凪ちゃんがさらわれたことが関わり合いがあると感じているんだ。茨木先輩もひょうたんを取り戻さない事には、酒呑童子に顔が立たないのでは?」
「……分かった。君達がそこまで言うなら、ついてきたまえ。ただし、身の安全は保証しないよ? 雪華さんだけは俺が守ってやる。神狐に朱雀は、窮地に陥っても自力で何とかするんだね。鬼婆に魂を喰われても俺は知らない、助けない」
「茨木童子。君、結構な言い草だな。神獣朱雀の俺にそんな脅しが利くと思っているのか?」
「雪華は僕が守る」
「私だって怯まず戦うもの。足手まといにはならないんだから」
「茨木童子、いったいどこに隠れ家があるんだ?」
茨木先輩は、道の駅の建物の横の、高く太い竹が並ぶ薄暗い竹林を指さしてニヤッって笑ったの。
私は見ちゃった。茨木先輩ったら「フッ、面白いっ」て意地悪く、妖しげに微笑んでたんだ。
「きゃあっ。……って茨木先輩!」
振り返ると、TシャツにGパンでラフでもキマってる姿の茨木先輩がいた。
私の前には、銀星と緋勇くんがすっと進んで立って身構えて守ろうとしてくれてる。
――茨木先輩なら、大丈夫。
だよね?
生徒会長だもん。鬼だけど危害は加えないはず。
「なんでアンタがいるんだ?」
「雪華さんに銀星くん。それに……」
「俺は四神獣が一人、朱雀の緋勇だ。その頭の角は鬼族、腕に嵌《は》めてる星を彫《ほ》った輪のアクセサリーは酒呑童子の配下の印。稲荷神社眷属の神狐銀翔から聞いている。それにこの妖気いつか感じた事がある。……お前は鬼の副総統頭《ふくそうとうがしら》、茨木童子だな」
「フッ、……朱雀ね。うん、俺も聞いてるよ。酒呑鬼組《しゅてんおにぐみ》と稲荷神社の眷属衆は和平交渉をする手はずだったよね。俺は目下休眠中の酒呑童子に代わって山の鬼婆に和平の了承を得に来たんだ」
「「和平交渉?」」
私は稲荷神社の眷属と鬼の一族が和平交渉をするなんて、聞いていなかった。
私と同じように銀星も驚いてる顔をしてるから、銀星も知らなかったんだね。
「雪華も銀星もまだ聞かされてなかったか? 稲荷神社の眷属と妖怪の中でも力の長《た》ける鬼族が同盟を組むらしいな」
「鬼族には派閥があって、今の我々は酒呑童子様を欠いている。最近の酒呑鬼組は昔と違って戦を望まないからね。いざという時のために稲荷神社の眷属達とは協力関係を結び、仲良くしとこうって算段さ。雪華さん、君達はひょうたんを探しに?」
「河童の凪ちゃんがさらわれたの。銀星の嗅ぎ取った匂いから、この辺に小河童もいるはずだって」
「へぇ。神狐の鼻はとびきり利くんだな」
「茨木先輩! その鬼婆に僕達も会わせてもらえませんか」
「……良いけど。君達が会って大丈夫かな? 鬼婆は女性や人間の子供の魂が大好物なんだ」
「人の子の魂を喰らう鬼婆……。まだそんな事をする奴が風森町にいたのか。数年前、俺が銀翔と退治した妖怪も魂を喰らう非道な奴だったが」
「俺は詳細は知らない。俺が茨木童子の息子として風森町に生まれたのはごく浅い歳月なのでね。父親から聞いた話では、鬼婆はずーっと姿を変えながらこの地に棲んでいるという。魂を喰らわずとも生きられるが、大好物な物は食いたくなるんだろ。酒呑童子様が酒を絶てないように。鬼婆が魂を欲したら、雪華さんが危ない目に合うかもしれない」
ゾクゾクゾク〜ッと私の全身を悪寒がはしった。
手紙から霊気がしたのは、鬼婆が子供達や女の人の魂を体から抜いて食べたから?
「悪いことは言わない。こんな危ないトコに立ち入るんじゃない。河童の娘の事なんか放っといて、君達はいい加減酒呑童子様のひょうたんを探し出したらどうなんだい?」
私はムカ〜ッときたぁ!
「私は凪ちゃんを救いたいの。友達を放っておくなんて出来ないもん。それに私達は妖怪探偵! 危険だって顧みずに踏み込むのが、妖怪探偵なんだから」
「雪華……。僕は少なからずその山の鬼婆と小河童、それに凪ちゃんがさらわれたことが関わり合いがあると感じているんだ。茨木先輩もひょうたんを取り戻さない事には、酒呑童子に顔が立たないのでは?」
「……分かった。君達がそこまで言うなら、ついてきたまえ。ただし、身の安全は保証しないよ? 雪華さんだけは俺が守ってやる。神狐に朱雀は、窮地に陥っても自力で何とかするんだね。鬼婆に魂を喰われても俺は知らない、助けない」
「茨木童子。君、結構な言い草だな。神獣朱雀の俺にそんな脅しが利くと思っているのか?」
「雪華は僕が守る」
「私だって怯まず戦うもの。足手まといにはならないんだから」
「茨木童子、いったいどこに隠れ家があるんだ?」
茨木先輩は、道の駅の建物の横の、高く太い竹が並ぶ薄暗い竹林を指さしてニヤッって笑ったの。
私は見ちゃった。茨木先輩ったら「フッ、面白いっ」て意地悪く、妖しげに微笑んでたんだ。