妖怪探偵☆雪女の雪華が参る!! 「俺の嫁になれ」と美鬼の茨木童子に迫られちゃって、私そんなの困ります! ――の巻。
第22話 鬼が二人
「そ、そんな……」
そんな事あるわけないよって、言いたかった私の口はそれ以上は言葉が出なかった。
だだだ、だって。だって!
「銀星、緋勇くん、わん太、後ろっ! 後ろぉっ! みんなの後ろに鬼がいるの。その人ぜったい鬼婆っ!」
「「鬼婆っ?」」
私が指を差すと、銀星と緋勇くんも子犬の姿に戻ったわん太も背後を振り返る。
鬼婆の白くボサボサの髪は逆立って、赤い目玉がギョロっとしてる。頭には茶色くて艶のないカサカサの長い角が二本生えていて、耳まで裂けそうな大きな口を開けて笑ってる。
わっ! 歯が伸びた。牙になる。
「喰ってやるー。魂を寄越せ! ふははは。やあっとだ。やっと見つけたよ」
気配と妖気を隠していた鬼婆は、瞬間、黒い妖気を体からプシュープシューって噴出させた。
「「黒い妖気!」」
「この鬼婆がさっきの小鬼を作った黒妖の出どころか!」
私と銀星は声が揃って、緋勇くんが核心を突く。
鬼婆は両方の手にギラギラッとさせた武器を持っている。
草刈り鎌と小さな斧みたいだ。
こんなの振り回されたら危ないよ。
「止めてください。どうして、魂を食べるんですか!」
「ウギャギャッ。可笑しいね、可笑しいねぇ。どうしてかってぇ? そんなのお前達みたいな歳の若い魂がとてつもなく美味いからに決まっているだろぉうがぁ?」
「雪華、なに言っても無駄だ。やっつけるよ」
「いいや、ここは俺が退治する。さぁっ、雪華、銀星、俺の後ろに隠れてろ」
緋勇くんが朱雀の姿に変化《へんげ》すると翼を広げた。私と銀星を守ろうする。
わん太も狛獅子の姿に変化《へんげ》すると、緋勇くんの左横に並んだ。
銀星が緋勇くんに匿《かくま》われた背後から飛び出し、緋勇くんの右隣りに並ぶ。
「僕だって戦うよ。これでも神狐の端くれ、鬼婆なんかに負けるか」
ちょっと、ちょっと。
なんか私だけ出遅れてない?
やだ、守られるだけなんて、私の気性には合わないんだから。
私は息を深く吸った。集中して体の内側から力が湧くイメージをそうぞうすると、吹雪が舞いつむじ風が起こる。
私達は鬼婆がどう攻撃に出るか分からなかったので、間合いを取って様子見をしてた。
「私だって戦うんだからね!」
「雪華」
「馬鹿な奴らだねぇ。この山の鬼婆から逃げるなら今のうちだよ。そぉら走りな、逃げ惑いな。あたしゃ、逃げる獲物を狩るのが最高の楽しみ、喜びさ。この手に捕まえた時の絶望した顔が大好きでねぇ。考えただけで、うっとりしちまうねぇ。あらっ、いやだ。お前らの魂があまりに美味そうだもんだから、よだれが出てきちまったよ」
「きったな〜い」
「黙れっ、うるさい。雪女の娘子め。まずはお前の魂から喰っちまおうかね。昔、お前とそこの狐の魂を喰おうとしたら、茨木童子と妖狐に邪魔されたからね。やっと念願の魂にありつけ……ギャアッ」
喋ってる途中で鬼婆は後ろに吹き飛んだ。
「誰がやったの?」
鬼婆が私達にお喋りしていて隙があったのか、あんなに威勢よく私達を脅していたのに、鬼婆は呆気なく地面に泡を吹いて倒れている。
「あっ……、茨木先輩」
ピクリとも動かなくなった鬼婆のすぐ横に茨木先輩が立っていた。
怖い顔をして、鬼婆を見下ろしている。
気づけば竹林のどこかから出て来た茨木先輩が、目にも止まらぬ早さで鬼婆に向かって鬼火をまとった鬼笛を投げつけていたんだよ。
地面に転がる鬼笛はいまだ青白く燃える炎に包まれてるのに、茨木先輩はチリチリ音をさせ燃える炎に躊躇うことなく拾い握りしめ、不敵にニカァッと笑った。
「茨木童子、お前どうして」
「茨木先輩、アンタ鬼婆とは仲間じゃなかったのか?」
私は山の鬼婆の言葉で引っかかったことがあった。
――『昔、お前とそこの狐の魂を喰おうとしたら、茨木童子と妖狐に邪魔された』――
確かに鬼婆はそう言ってた。
そんな事あるわけないよって、言いたかった私の口はそれ以上は言葉が出なかった。
だだだ、だって。だって!
「銀星、緋勇くん、わん太、後ろっ! 後ろぉっ! みんなの後ろに鬼がいるの。その人ぜったい鬼婆っ!」
「「鬼婆っ?」」
私が指を差すと、銀星と緋勇くんも子犬の姿に戻ったわん太も背後を振り返る。
鬼婆の白くボサボサの髪は逆立って、赤い目玉がギョロっとしてる。頭には茶色くて艶のないカサカサの長い角が二本生えていて、耳まで裂けそうな大きな口を開けて笑ってる。
わっ! 歯が伸びた。牙になる。
「喰ってやるー。魂を寄越せ! ふははは。やあっとだ。やっと見つけたよ」
気配と妖気を隠していた鬼婆は、瞬間、黒い妖気を体からプシュープシューって噴出させた。
「「黒い妖気!」」
「この鬼婆がさっきの小鬼を作った黒妖の出どころか!」
私と銀星は声が揃って、緋勇くんが核心を突く。
鬼婆は両方の手にギラギラッとさせた武器を持っている。
草刈り鎌と小さな斧みたいだ。
こんなの振り回されたら危ないよ。
「止めてください。どうして、魂を食べるんですか!」
「ウギャギャッ。可笑しいね、可笑しいねぇ。どうしてかってぇ? そんなのお前達みたいな歳の若い魂がとてつもなく美味いからに決まっているだろぉうがぁ?」
「雪華、なに言っても無駄だ。やっつけるよ」
「いいや、ここは俺が退治する。さぁっ、雪華、銀星、俺の後ろに隠れてろ」
緋勇くんが朱雀の姿に変化《へんげ》すると翼を広げた。私と銀星を守ろうする。
わん太も狛獅子の姿に変化《へんげ》すると、緋勇くんの左横に並んだ。
銀星が緋勇くんに匿《かくま》われた背後から飛び出し、緋勇くんの右隣りに並ぶ。
「僕だって戦うよ。これでも神狐の端くれ、鬼婆なんかに負けるか」
ちょっと、ちょっと。
なんか私だけ出遅れてない?
やだ、守られるだけなんて、私の気性には合わないんだから。
私は息を深く吸った。集中して体の内側から力が湧くイメージをそうぞうすると、吹雪が舞いつむじ風が起こる。
私達は鬼婆がどう攻撃に出るか分からなかったので、間合いを取って様子見をしてた。
「私だって戦うんだからね!」
「雪華」
「馬鹿な奴らだねぇ。この山の鬼婆から逃げるなら今のうちだよ。そぉら走りな、逃げ惑いな。あたしゃ、逃げる獲物を狩るのが最高の楽しみ、喜びさ。この手に捕まえた時の絶望した顔が大好きでねぇ。考えただけで、うっとりしちまうねぇ。あらっ、いやだ。お前らの魂があまりに美味そうだもんだから、よだれが出てきちまったよ」
「きったな〜い」
「黙れっ、うるさい。雪女の娘子め。まずはお前の魂から喰っちまおうかね。昔、お前とそこの狐の魂を喰おうとしたら、茨木童子と妖狐に邪魔されたからね。やっと念願の魂にありつけ……ギャアッ」
喋ってる途中で鬼婆は後ろに吹き飛んだ。
「誰がやったの?」
鬼婆が私達にお喋りしていて隙があったのか、あんなに威勢よく私達を脅していたのに、鬼婆は呆気なく地面に泡を吹いて倒れている。
「あっ……、茨木先輩」
ピクリとも動かなくなった鬼婆のすぐ横に茨木先輩が立っていた。
怖い顔をして、鬼婆を見下ろしている。
気づけば竹林のどこかから出て来た茨木先輩が、目にも止まらぬ早さで鬼婆に向かって鬼火をまとった鬼笛を投げつけていたんだよ。
地面に転がる鬼笛はいまだ青白く燃える炎に包まれてるのに、茨木先輩はチリチリ音をさせ燃える炎に躊躇うことなく拾い握りしめ、不敵にニカァッと笑った。
「茨木童子、お前どうして」
「茨木先輩、アンタ鬼婆とは仲間じゃなかったのか?」
私は山の鬼婆の言葉で引っかかったことがあった。
――『昔、お前とそこの狐の魂を喰おうとしたら、茨木童子と妖狐に邪魔された』――
確かに鬼婆はそう言ってた。