妖怪探偵☆雪女の雪華が参る!! 「俺の嫁になれ」と美鬼の茨木童子に迫られちゃって、私そんなの困ります! ――の巻。
第8話 河童の笑い
背後に立つ河童が「ぐははははっ」と笑ってる。
まるで戦隊ヒーロー物の悪役のボスみたい。
私と銀星を馬鹿にしたように、自信たっぷりに大声で笑ってる。
「何か用ですって? きゅうり畑には用はないけど、酒呑童子のひょうたんには用があるわ」
「……お前、妖怪か。人間ではないな」
「そうよ、半妖だけどね」
私と銀星の肩を強い力で掴んだまま、河童は私たちに睨みをきかせている。銀星はじっと動向を伺うためか、河童にされるまま。我慢しているみたい。こめかみに青筋が立ってるけど。
「河童は酒呑童子のひょうたんをどうする気だ?」
「あぁっ? ……そっちのお前は、きつねだな? クンクン、妖狐の微かな気配がする。何を探りに来やがった?」
この河童は鼻をクンクンすると妖怪を見分けられるのかしら? 銀星みたいに嗅覚が鋭いんだね。
「僕たちがここに来た訳を話してやる。その前にこの手をどかしてもらおうか」
「私たちは妖怪探偵よ。事件あらば駆けつける。人や妖怪が困っていたら、その問題の解決に全力を尽くすわ」
河童の眉毛がぴくぴくと動いた。
「生憎、オラは困っちゃいねぇ。妖怪探偵だとぉ、笑わしやがる。ただの半妖のガキどもじゃねぇか。オメエたちに何が出来んだぁ? オラは河童の親分、河童界の荒くれ者の水虎《すいこ》で通ってんだ。オメエらに用はねえ」
河童は怒って私と銀星を突き飛ばそうとした。だけど、私たちがそのまま大人しくやられるわけがない。
河童のスイコに押された拍子に前によろけそうになるのをこらえた。
私と銀星はジャンプして宙返りしてスイコの方を向き、間合いを取る。
「もうっ! 乱暴ね」
「オメエら上手いこと言って、本当はおおかた、オラのスペシャルきゅうりを盗みに来たのだろう? 泥棒だべ。盗っ人だべ」
ムムムッ! 私、腹が立ってきた。
頭からシュワーッて蒸気が出そう。
「誰が盗っ人よ! 失礼ね。私、きゅうりって好きでも嫌いでもないっ」
私の中の雪女妖力の最大冷気を大爆発させてやりたい。
「だぁれが泥棒の話を素直に聞くべ」
河童は聞く耳をもたないつもりだ。
このままでは無駄に時間が過ぎるだけ。拉致が開かない。
「オメエら二人共縛りあげて、柱さこしらえてくくりつけ、海風にさらしてやるべさ」
そんなの絶対にイヤ。
今日の宿題だってまだ終わってないのに、冗談じゃないよ。
「もう構わないよねっ、銀星!」
「うん、雪華。河童の水虎《すいこ》には少し冷静になってもらおうか」
うんうん、慎重な銀星のオッケーも出た!
私はえいやっと気合い入れ、集中して意識を体中に巡らす、銀星は伊達眼鏡を外した。
体が泡立つようにふつふつ、そして奥底から湧き上がる妖力。私の全身から雪女の冷気が噴き出す。
岩蔵の洞窟の温度が一気に下がる。
銀星はきつねの耳が出て、ふりふりの尻尾が出てる。
完全な神狐の姿にはならずに人の姿も保っている。銀星は青白い狐火を作って、それを私の周りを囲うように取り巻いた。
――私を、銀星の妖気が守ってくれてる。
「オメエっ! 雪女か。止《や》めれ、きゅうりが腐っちまう。止《や》めねえとオラ許さねぇ」
「なら、私たちの話を大人しく聞く?」
私はよりいっそう妖力を発揮させる。
あたりはぐっと寒くなり、私の体から雪が舞い、風を銀星が起こす。洞穴内に音を鳴らしながら強風が渦を巻くように行き交い、たちまち轟々と吹雪出す。
「止《や》めれ! 分かった、分かった。勘弁しろ」
「ほんと? ……ごめんなさい。私たち、脅すような真似をしちゃって」
私はちょっとやりすぎたかな〜っと思った。
妖力を止めると、ふっと何もかもが消える。吹雪いた雪も、吹き荒れた強風も。
「甘ちゃんだべな。やっぱりガキは純で騙しやすいべ」
河童のスイコが隙を突いたとばかりにニンマリ笑って片手を上げる。
すると、農作業をしていた小河童たちがわ〜っわ〜っと叫びながら、次から次へと私と銀星に飛びかかって来た。
まるで戦隊ヒーロー物の悪役のボスみたい。
私と銀星を馬鹿にしたように、自信たっぷりに大声で笑ってる。
「何か用ですって? きゅうり畑には用はないけど、酒呑童子のひょうたんには用があるわ」
「……お前、妖怪か。人間ではないな」
「そうよ、半妖だけどね」
私と銀星の肩を強い力で掴んだまま、河童は私たちに睨みをきかせている。銀星はじっと動向を伺うためか、河童にされるまま。我慢しているみたい。こめかみに青筋が立ってるけど。
「河童は酒呑童子のひょうたんをどうする気だ?」
「あぁっ? ……そっちのお前は、きつねだな? クンクン、妖狐の微かな気配がする。何を探りに来やがった?」
この河童は鼻をクンクンすると妖怪を見分けられるのかしら? 銀星みたいに嗅覚が鋭いんだね。
「僕たちがここに来た訳を話してやる。その前にこの手をどかしてもらおうか」
「私たちは妖怪探偵よ。事件あらば駆けつける。人や妖怪が困っていたら、その問題の解決に全力を尽くすわ」
河童の眉毛がぴくぴくと動いた。
「生憎、オラは困っちゃいねぇ。妖怪探偵だとぉ、笑わしやがる。ただの半妖のガキどもじゃねぇか。オメエたちに何が出来んだぁ? オラは河童の親分、河童界の荒くれ者の水虎《すいこ》で通ってんだ。オメエらに用はねえ」
河童は怒って私と銀星を突き飛ばそうとした。だけど、私たちがそのまま大人しくやられるわけがない。
河童のスイコに押された拍子に前によろけそうになるのをこらえた。
私と銀星はジャンプして宙返りしてスイコの方を向き、間合いを取る。
「もうっ! 乱暴ね」
「オメエら上手いこと言って、本当はおおかた、オラのスペシャルきゅうりを盗みに来たのだろう? 泥棒だべ。盗っ人だべ」
ムムムッ! 私、腹が立ってきた。
頭からシュワーッて蒸気が出そう。
「誰が盗っ人よ! 失礼ね。私、きゅうりって好きでも嫌いでもないっ」
私の中の雪女妖力の最大冷気を大爆発させてやりたい。
「だぁれが泥棒の話を素直に聞くべ」
河童は聞く耳をもたないつもりだ。
このままでは無駄に時間が過ぎるだけ。拉致が開かない。
「オメエら二人共縛りあげて、柱さこしらえてくくりつけ、海風にさらしてやるべさ」
そんなの絶対にイヤ。
今日の宿題だってまだ終わってないのに、冗談じゃないよ。
「もう構わないよねっ、銀星!」
「うん、雪華。河童の水虎《すいこ》には少し冷静になってもらおうか」
うんうん、慎重な銀星のオッケーも出た!
私はえいやっと気合い入れ、集中して意識を体中に巡らす、銀星は伊達眼鏡を外した。
体が泡立つようにふつふつ、そして奥底から湧き上がる妖力。私の全身から雪女の冷気が噴き出す。
岩蔵の洞窟の温度が一気に下がる。
銀星はきつねの耳が出て、ふりふりの尻尾が出てる。
完全な神狐の姿にはならずに人の姿も保っている。銀星は青白い狐火を作って、それを私の周りを囲うように取り巻いた。
――私を、銀星の妖気が守ってくれてる。
「オメエっ! 雪女か。止《や》めれ、きゅうりが腐っちまう。止《や》めねえとオラ許さねぇ」
「なら、私たちの話を大人しく聞く?」
私はよりいっそう妖力を発揮させる。
あたりはぐっと寒くなり、私の体から雪が舞い、風を銀星が起こす。洞穴内に音を鳴らしながら強風が渦を巻くように行き交い、たちまち轟々と吹雪出す。
「止《や》めれ! 分かった、分かった。勘弁しろ」
「ほんと? ……ごめんなさい。私たち、脅すような真似をしちゃって」
私はちょっとやりすぎたかな〜っと思った。
妖力を止めると、ふっと何もかもが消える。吹雪いた雪も、吹き荒れた強風も。
「甘ちゃんだべな。やっぱりガキは純で騙しやすいべ」
河童のスイコが隙を突いたとばかりにニンマリ笑って片手を上げる。
すると、農作業をしていた小河童たちがわ〜っわ〜っと叫びながら、次から次へと私と銀星に飛びかかって来た。