雨降る日のキセキ
「あ…千隼くん…」


夏菜が露骨に“しまった”という顔をする。


その視線の先には悲しそうな顔を浮かべた千隼くんがいた。


「悪い。俺が余計な話を…」


心底申し訳なさそうな顔で謝る翔吾。


気まずい沈黙が流れる。


絶対聞こえてたよね…。


どうしよう……。


「あの…千隼くん……」 


なんて言えばいいんだろう…。


なんて言っても傷つけるよね…。


「ほらー、あんたが余計なこと言うから被害者が増えたじゃん。あー可哀想」


「んなデカい声で可哀想って言うなよ。余計可哀想だろ」


夏菜が空気を変えようとわざとそう言うと、千隼くんもそれに乗っかってくれた。


固まった空気がじんわりとほぐれていく。
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