雨降る日のキセキ
そしたら朝陽くんは私の話に付き合ってくれて…結局暗くなるまで話をしてくれたんだったかな…。


思い出せる会話はほとんどない。


今の今まで忘れてたんだからしかたないか…。


「千紘!帰るぞ。雷近づいて来たから危ない」


「あ……ごめん…」


紺色の傘に入れてもらい、二人で歩きだす。


雨の音も雷の音も大きくて、浮かびかけている記憶がかき消されそうだ。


せっかく思い出せそうだったのにな……。


「ついに明日か…」


「え…?」


「…準決勝だろ明日」


「あ…そうだね」


「緊張感ねぇな」


「…ごめん…」


今…こんな昔のこと考えてちゃダメだね…。


もう…忘れなきゃいけないのに。


今思い出して何になるの…?


もういっそのこと忘れたいよ…っ。
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