雨降る日のキセキ
「……俺じゃダメか…?」


しぼり出したような声に、時が止まったようだった。


うるさかったはずの雷雨が聞こえなくなり、音のない世界に包まれる。


ひとつの紺色の傘を挟んで向かい合う私たち。


千隼くんの顔は真剣だった。


彼の真っ直ぐな視線が突き刺さる。


「俺は絶対に千紘を泣かせたりしない。寂しい思いもさせない。千紘の前から消えたりしないから」


ふたりを隔てている傘。


激しく打ちつける雨。


唸るように鳴り響く雷。


アスファルトに落ちては弾ける水滴。


視線を合わせられなかった。


何を言うこともできなくて、ただ雨だけが強くなって私たちを濡らしていく。


「…俺じゃダメ?」


…ごめんね……。


ごめんね、千隼くん…っ。


どうしても忘れられないよ…っ。
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