雨降る日のキセキ
「千隼くーーん!!ナイスピッチーーー!!」


私たちがいる一塁側のスタンドが歓声と拍手に包まれる。


この準決勝までずっと1人で投げてるのに、全く崩れる気配がない。


なんてすごいんだろう。


いったい、どれほどの努力を積んだんだろう。


血の滲むような努力なんだろうな…。


野球が嫌いだと言っていた千隼くん。


そんな千隼くんが、ニコニコしながらバッターボックスに向かってる。


まるでこの緊張感を楽しんでいるかのように、平然と左の打席に立つ。


毎試合ヒットが打てて足の速い千隼くんは、最近は1番打者を任されている。


右投げ左打ちの俊足ピッチャー。


なんでもできる天才だと思われがちだけど、本当は努力のおかげ。


だけど本人は飄々としていて努力を見せない。


スター性を感じる理由はそのあたりにあるのかもしれない。
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