雨降る日のキセキ
「千隼くん頑張ってーー!」


初球はストライク。


2球目もストライク。


あっという間に追い込まれたけど、ここから千隼くんの本領が発揮されていく。


際どい球をファールにしてボールカウントを稼ぎ、フルカウントまで持っていく。


バットコントロールの良さは北野1だと思う。


粘ってフォアボールを選ぶのが上手いしから、相手ピッチャーからしたら嫌な相手だろう。


本当に器用な選手だ。


そして12球目。


カキーーーーン!!


甲高い金属音が応援を切り裂く。


まるで弾丸のような打球が、ライトスタンドに飛び込んだ。


「きた!!ホームラン!!」


粘った末の先頭打者ホームラン。


これが千隼くんだ。


「千隼くん!ナイスバッティング!!!」


控えめに喜び表しながらダイヤモンドを一周する千隼くん。


その姿は何よりもカッコ良かった。


昨日のことがメンタルに響いちゃうんじゃないかと心配していた私がバカだった。


千隼くんはそんなヤワじゃない。


強い人だ。


じゃなきゃこんな大舞台で投げられないし、ホームランも打てない。


千隼くんとなら甲子園だって夢じゃない。


本気でそう思うんだ。


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