雨降る日のキセキ
「翔吾!ちょっといい?千隼くんも」
練習後のミーティングが終わり、そそくさと帰ろうとする二人を捕まえ引き止める。
私を挟んで顔を合わせた二人は、顔をしかめて互いに睨み合っている。
「ちょっと話そう?ね?」
二人の腕を掴み、強引にグラウンドの隅にあるベンチに連れていく。
私を真ん中にし、お互い外を向いて顔を合わせようとしなかった。
「今日の皆の空気、気づいてた?皆、二人の顔色伺って気にしてたよ」
二人から反応はなかったけど、構わず続ける。
「今日から新チームが動き出して、これから頑張ろうって時に、キャプテンと副キャプテンがそれじゃダメでしょ?」
チームをまとめる立場の二人がバラバラになってちゃ、強いチームなんて作れない。
ふたりもそれは分かっているからか、徐々に身体が内側に向いてくる。
「私は、強いチームを作りたい。もう負けたくない。次こそ甲子園に行きたいって思ってる。そのためにはふたりの力が必要なんだよ」
嘘偽りない本音だ。
朝陽くんに会いたいとか、そんな理由じゃない。
勝ちたい。負けたくない。
だから甲子園に行きたい。