雨降る日のキセキ
「……ロッカールームで何があったの?」


温厚な千隼くんがあそこまで怒るなんて、相当な何かがあったんだろう。


それを知って、ふたりを仲直りさせたいのに、どちらも口を開かなかった。


お前が話せと言いたげに睨み合っているだけ。


「もう…。じゃあもういいよ。何があったかは聞かない。でも…翔吾のあの発言だけは私、許さないからね?」


“お前のせいで負けた”

“お前が先輩たちの夢を奪った”


どんな理由があっても言っちゃいけない言葉だ。


「…本気であんなこと思った?本気で千隼くんのせいで負けたと思ってるの?」


翔吾はギロッと私たちを睨み、沈黙を決め込む。


「……翔吾は本気でそんなこと思う人じゃない。私はそう思ってるよ」


責任感が強くて、チームのことをよく分かっていて。


だからこそ監督は翔吾をキャプテンにしたんだと思う。


そんな翔吾が、投手にだけ責任を押しつけるはずがない。
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