雨降る日のキセキ
「千隼くんはさ、どうして翔吾に話したくないの?翔吾のこと、信頼してないの?」


「……んなわけねぇだろ」


小さな小さな声だったけど、この声は確実に翔吾に届いているはずだ。


千隼くんは、ゆっくりと視線を翔吾に向ける。


この日初めて二人の視線がぶつかった。


「…お前にだって、話したくないことくらいあるだろ」


「ねぇよ。試合に勝つことより大事な秘密なんてあるわけないだろ」
 

「悪いけど、俺にはそれがある。でもそれは、お前を信頼してないって意味じゃねーから」


「じゃあなんだよ。俺はこの先も何も知らないまま、対策も立てず、いつコントロール不能になるかもわからないピッチャーをリードしなきゃなんねーわけ?」


「そうならないようにどうにかする。それでいいだろ」


「なんで一人で抱え込もうとするわけ。これはお前だけの問題じゃなくて、バッテリーの問題だろ」 


「違う。これは俺の―」


「それがムカつくっつってんだよ!一緒に乗り越えりゃいいじゃん。なんでそれがダメなわけ?どうせお前のことだから、一人で抱えきれずに暴走して、また同じこと繰り返すだろ。俺のことを頼れっつってんだよ!」
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