雨降る日のキセキ
甲子園に連れていく。


その約束は叶わなかった。


約束を交わした翌日に朝陽くんは亡くなった。


1日たりともその約束を忘れた日はなかった。


そんな大切な約束事を、どうしてよりによって望月くんが…っ。


「なーんてな」


…望月くんは朝陽くんじゃない。


そう言い聞かせてるのに、望月くんは朝陽くんと同じ発言をする。


「もう…やめてよ…っ。私を惑わせないで…っ」


もう忘れたいのに。


できることなら朝陽くんの記憶も、約束も、跡形もなく消し去りたいのに…っ。


「悪い…冗談のつもりだった。気に障るようなこと言ったならごめん」


悲しそうな顔をする望月くんを見てハッとする。


私、最低だ…。


自分の叶わない恋心を望月くんにぶつけちゃうなんて…。


「ごめんなさい…。全部忘れて…。本当にごめんなさい」


「…いや。俺の方こそ今のは忘れて。ただの冗談だから」
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