雨降る日のキセキ
もう2度とトラウマが蘇って炎上した練習試合の二の舞いになるもんか、と思ってケリをつけにいったのに。


結局、トラウマは拭えなかった。


それどころか心を乱され、不安を掻き立てられて。


もしかしたらまた急に投げられなくなるんじゃないか。


そう思うと怖かった。


自分の弱さが情けない。


いつまで過去に囚われるつもりだ。


そう、自分を奮い立たせてなんとか抑えて…。   


9回裏、ツーアウト。


あと一歩だと思った瞬間、突然投げられなくなったんだ。


刃のような言葉の数々が蘇ってきて、指先が震えて。


球を握ることすらままならなかった。


悪夢だった。


正面でミットを構える翔吾が翔吾に見えなかった。


急に翔吾を信頼できなくなったんだ。


悪魔に取り憑かれたような感覚だった。
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