雨降る日のキセキ


「はぁぁぁー疲れたぁぁ」


広々とした談話室のソファに雪崩れ込む。


あっという間に合宿3日目の夜を迎えた。


だけどまだ3日目だ。


まだ1週間以上残っているのに、私の体力は限界を迎えていた。


「女の子がそんな無防備な格好で寝転ぶなよ」


お風呂上がりの千隼くんが濡れた髪をしたたらせながら私の隣に座った。


「無防備って…。別に普通だよ」


半袖と短パンのラフな格好であるけど…。


談話室には誰もいなかったし…。


でも…気にしてくれてるのかな。


「合宿にこんな自由時間あるもんなんだな」


「あぁ…そっか、千隼くんは初めてだよね」


1年生の頃からいるような感じがするけど、転校してきたのは3か月前くらいかな。


今では北野に欠かせない存在だ。


「監督の意向で練習以外は緩いんだよね。その分練習は厳しいでしょ?」


メリハリを大切にする指導方針で、練習が終わればただの優しいオジちゃんになる監督。


初日にはこの談話室で1年生とトランプをしたりして距離をつめていた。


そういう監督だからこそ、サボり魔だった子たちもやり直しやすいのかもしれない。
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