雨降る日のキセキ
…奪われるも何も…。


別に私は……。


「ったく。口を開けば余計なことしか言わねぇなアイツは…」


翔吾のせいで気まずくなった談話室に、バラエティの笑い声が響く。


…私は…千隼くんのことをどう思ってるんだろう。


人として好きだけど、恋愛の意味ではどうなんだろう…。


わかんないや…。


千隼くんと話してたら楽しいし、嫌なことも忘れられる。


でもそれは…恋愛…なのかな…。


朝陽くんのことを忘れられたのかって言われると、そんなことはないし…。


「…なぁ、今ちょっと時間ある?」 


つけたばかりのテレビを消し、千隼くんが立ち上がる。


「あるけど、どうしたの?」


つられて立ち上がると、千隼くんは嬉しそうに私を手招きした。


「えっ、外?バレたら怒られちゃうよ」


合宿所内では自由にしていいけど、夜中の外出は禁止だ。


昨日の夜それを破った2年生が怒られていた。
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