雨降る日のキセキ
「ちょっとくらい大丈夫」


千隼くんはそう言って合宿所の扉を開けた。


「意外と冷えるね…」


真夏とはいえ、山奥の夜は肌寒い。


甲高い虫の鳴き声が輪になって響いている。


「空、見てみ?」


言われた通り見上げてみると、そこには一面の星空が広がっていた。


「わぁ…。綺麗……」


どこを見渡しても星が見えるこの光景は、都会じゃ見ることができない。


「こんな星空初めて見た…」


3日間の疲れが癒えると共に、明日からもまた頑張れそうな力がみなぎってくる。


「星に願いを祈ったら叶うんだってさ」


昔、朝陽くんが教えてくれた。


「流れ星じゃなくて?」

 
「うん。お星様に願ったら叶うの」


きっと、落ち込んでた私を励ますための作り話だったんだろう。


でも、私は叶うって信じてる。
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