雨降る日のキセキ

✡✡

「…ふぅ……」


いつもの公園。


朝陽くんとの想い出の公園。


そのベンチに腰を下ろす。


夕焼けの空が木々の向こうに見えている。


“亡くなった人は星になって皆の幸せを見守ってる”


合宿の日の夜が蘇る。


私がもう少し外にいると告げたときの、あの寂しそうな顔が頭から離れないんだ。


それに…願い事を尋ねた時のあの神妙な顔も…。


きっと…千隼くんは何か抱えている。


あの夏の決勝戦だって…。


あんなに儚くて、いつかいなくなってしまいそうな姿を見せられたら、側にいてあげたいって思ってしまうんだ。


だからあの夜、決めたんだ。


朝陽くんのことは忘れるって。


しっかり前を向いて、千隼くんと向き合う。


朝陽くんのことは、もう終わったことなんだ。


短く息を吐き、空を見上げると、オレンジ色の世界が広がっていた。
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