雨降る日のキセキ
さっさと階段を上っていくけど、翔吾がついてくる気配がなかったから振り返って見ると、階段の途中にしゃがんで靴紐を結び直していた。


「ちょっとー、早くー」


少し翔吾の方へ引き返そうかと思ったその時、木の陰から誰かが飛び出して来て、ものすごい勢いで翔吾へ突進していった。


そこからはまるでスローモーションだった。


ジャージ姿の誰かに押され、しゃがんだ姿勢のまま階段を転げ落ちていく翔吾。


満足気に口角を上げ、階段横の茂みに消えていく人影。


剥き出しコンクリートの階段の角に点々と付着していく赤い血液。


「っ翔吾…!!!!」


ハッと我に返ったときには、翔吾は1番下の段で倒れていた。


「翔吾!!!!」


慌てて階段を下り、翔吾に駆け寄る。
< 173 / 336 >

この作品をシェア

pagetop