雨降る日のキセキ
「…そっか。今日はもう解散しよう。こんな雰囲気で練習はできない。翔吾のことは何かあればすぐに監督が連絡してくれるから」


千隼くんが淡々と指示を出す。


だけど、誰もその場を動かなかった。


「…ここにいたってできることなんかねぇよ」


千隼くんはそう言って荷物をまとめ始めた。


それに倣う人はいない。


皆俯いて拳を握りしめている。


「…あんな怪我じゃ、どう考えたって大会には間に合わない」


誰かが発した言葉は、部室の空気をより重くするものだった。


「……とにかく、今日は解散だ。早く帰れ」


千隼くんはそう言って足早に部室を出ていってしまった。


今1番ツライのは、誰よりも翔吾と仲が良く、信頼し合っていたバッテリーを失った千隼くんだ…。


それなのに、皆の前では冷静に振る舞って、私のことも落ち着かせてくれて…。
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