雨降る日のキセキ
「泣くなよ…」


「…だって、千紘から泣きながら電話掛かってきたんだよ?翔吾が階段から落ちて意識不明だって。ホントに無事でよかった…っ」


堪えきれなくなったのか、夏菜はおいおいと泣き始めた。


翔吾がチラリと私を見る。


「…じゃあ…私はこれで。頑張ってね、翔吾」


「お前もな。野球部のこと頼んだぞ」


翔吾の力強い言葉を背に、病室を出る。


こんな時だけど、こんな時だからこそ、夏菜と翔吾が上手くいけばいいなぁ。


そんなことを思いながら千隼くんに思いを馳せる。


翔吾が大会に出られなくなって激しく落ち込んでいる千隼くん。


私が支えなきゃいけない。


1番近くで千隼くんの力になりたい。


翔吾に比べて、私なんかにできることなんてほとんどないのかもしれない。


それでも、気持ちよく投げられるように全力でサポートしたい。


それが私の仕事だ。

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