雨降る日のキセキ
「お前らの気持ちはよく分かる。でも、落ち込んでて何になる?翔吾の怪我が治るのか?試合で勝てるのか?なぁ」


監督が強い口調で皆を鼓舞する。


それに一切反応しない千隼くんは、ただのもぬけの殻だった。


虚ろな瞳で生気を感じない。


「お前らが勝つことが1番の治療薬だと俺は思ってる。まずは今週末に向けて全力でやれ。…千隼、聞いてんのか。お前がキャプテン代理として引っ張っていかなきゃいけないんだぞ」


千隼くん…。


監督からの言葉が聞こえていないのか、千隼くんは反応を示さなかった。


「…はぁ……。お前らは練習を始めておけ。暗い雰囲気のまましてたら罰走な。明るく声出してやってけ。わかったな?で、千隼はちょっと来い」


監督が千隼くんを連れて校舎の中に入っていく。


「さっ!皆練習始めるよ!翔吾ならピンピンしてるから絶対大丈夫だよ。明るく行こう!」


勝つことが1番の治療薬。


その通りだ。


手を叩き部員を動かすと、皆切り替えができたのか、声を出して動き始めた。


だけど、千隼くんの姿が戻ってくることはなかった―。
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