雨降る日のキセキ
“ちぃちゃん、おいで”
朝陽くんの腕に飛び込むと、いつも爽やかな匂いがした。
“久しぶり、朝陽くん!”
“最近会えなくてごめんね?練習がキツくてさ。寂しかったっしょ”
“うん…もっと朝陽くんと遊びたいっ”
朝陽くんが中学生になってから、朝陽くんはあまり私の相手をしてくれなくなった。
寂しかった。
“ちぃちゃん。俺ね、本気で甲子園目指してるんだ。それだけじゃない。甲子園で優勝して、プロ野球選手になりたい。本気でそう思ってるんだ”
そんな私に、朝陽くんは真剣な顔で語った。
“だからあんまりちぃちゃんには会えない”
“えー…寂しいよぉ…”
“そう言うと思った。だからね、代わりに約束する”
“約束…?”
“うん。ちぃちゃんを甲子園に連れていく。絶対に”
この一切の濁りもない澄んだ瞳は一生忘れない。
まっすぐ、力強く、朝陽くんは私に言った。
“約束する”
その翌日、朝陽くんは死んだ。