雨降る日のキセキ
「…図星じゃん…」


真子ちゃんはそう呟いて翔吾が投げたペットボトルを片付ける。


「…翔吾も翔吾なりに思うところがあるのかもしれないね」


「…すみません。先輩たちに対して言い過ぎました」


「ううん。真子ちゃんの言う通りだよ」


真子ちゃんが誰よりもチームを思っていることはよく伝わった。


きっと翔吾もその気持ちは受け取ったはずだ。


「でも…真子ちゃんすごいね。私、翔吾にあんなふうに凄まれたら何も言えないや」


見た目が見た目なだけあって怖いんだもん…。


「湯浅さん、根は優しい人ですから」


「そっか。そうだよね…」


優しいもんね…翔吾は…。


真面目で、熱心で、責任感が強くて。


だからこそ、途中で投げ出した千隼くんが許せないのかもしれない。


共に甲子園を目指してきた人間が理由も言わず去っていく。


翔吾からすれば裏切られた気分だっただろう。


「…翔吾はショックだったんだと思う。でも、諦めてなんてない。翔吾は諦めが悪いヤツだからね」


真子ちゃんの言う通り、諦めちゃダメだよね。


千隼くんが戻ってくるって信じなきゃ。


絶対に甲子園に行くんだ。
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