雨降る日のキセキ
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その日、翔吾は気持ちを入れ替えた様子で部活にやって来た。
キャプテン自らがせっせと準備に動く姿を見て、それまでダラダラしていた1年生がテキパキと動き始める。
翔吾の行動1つでこんなにも空気が変わるんだ。
アップに入る前、翔吾は部員を集め話を始めた。
「今日、千隼と話をした」
“千隼”というワードが出た瞬間、緊張感が走り、皆の意識が翔吾一点に集中する。
「結論から言うと、アイツはもう野球部には戻ってこない」
部員一人一人と目を合わせ、翔吾は断言した。
その目は力強かった。
「俺はアイツを諦めた。でも。甲子園という夢は諦めない」
部員全員が翔吾に引き込まれているのを感じた。
真っ直ぐに翔吾を見つめ、凛々しい顔で話を聞いている。
翔吾がやる気を持って部員に向き合うだけで、こんなに顔つきが変わるんだ。