雨降る日のキセキ
「答えてよ千隼くん」  


お願い。


「俺のことは放っといてくれ」


「嫌だ!このまま終わっちゃうなんて絶対に嫌!」


いったい何があったの?


どうしちゃったの?


どうして何も教えてくれないの?


「…俺はもういい。もういいんだよ何もかも」


こんなに投げやりな千隼くんは初めてだった。
 

変わってしまった。


千隼くんはこんな人じゃなかったのに。


「…約束したじゃん。私を甲子園に連れて行ってくれるって。約束守ってよ…」


嘘。


ホントはそんな約束どうでもいい。


千隼くんが前の千隼くんに戻ってくれたらそれでいい。


でも今は、そんなちっぽけな口約束にすがるしかないんだ。


「……千隼くんがいるから甲子園を目指せる。北野には千隼くんが必要なんだよ…?一緒に目指そうよ。皆待ってるよ。皆、千隼くんがいなくても甲子園を目指して頑張ってる。お願い、千隼くん。戻ってきてよ…」


こんなに近くにいるのに遠い。


伝わらない、届かない、この想い。
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