雨降る日のキセキ
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【話がある。今から体育倉庫に来てほしい】
そんなメッセージが、部活が終わった瞬間届いた。
千隼くんからだ。
「…もう?」
考えておくって言われたのが今朝だ。
そんな簡単に答えが出たってことは、やっぱり……。
悪い方へ悪い方へと考えが進む。
だから、どうしてこんな時間の体育倉庫なのかなんて考えもしなかったんだ。
校門へ向かっていく皆とは逆方向の体育倉庫へ向かう。
「千隼くーん?いるー?」
日が落ちたこの時間の倉庫は真っ暗だ。
中に入って声をかけても、返事はなかった。
「千隼――んーっ!」
背後から口を抑えられ、そのまま抱きつかれる感覚が襲ってきた。
「んーーーーっ!!」
胸に手を回され、背筋がゾクッと凍りつく。
気持ち悪い…っ。
「やめて…!!誰!?」
ありったけの力で振りほどくと、そこにいたのは赤坂くんだった。
はめ殺しの小さな窓から微かに差してくる月光が、赤坂くんのニヤリとした口元を照らす。
逃げなきゃ…。
正気じゃない…。
ゆっくり後ずさって倉庫を出ようとしたけど、ガシッと腕を捕まれ逃げられなかった。