雨降る日のキセキ

守りたいもの


―翌日。


「千紘」 


部活に行こうと教室を出たところ、翔吾に呼び止められた。


「一人で行くな。一緒に行くぞ」


「ありがと…」


私に気を遣ってか、適度な距離をとって横を歩いてくれる翔吾。


その優しさが胸に染みる。


翔吾のこの優しさは、蔑ろにはできない。


でも…


もしグラウンドに赤坂くんがいたらどうしよう。


翔吾だって練習があるから、ずっと側にいてくれるわけじゃない。


一人になったときにまた何かされたら…?


怖い……。


グラウンドが見えてきて、自ずと足が止まってしまった。


「お前……」


翔吾が困ったように、そして覚悟を決めたように、私の目を見つめる。


「監督に相談しよう。それがお前のためになる」


「ダメだよ。昨日約束したじゃん。私は野球部を守りたい。守らなきゃいけないの」


あの夏、誓った。


絶対にこのチームで甲子園に行くんだと。


皆のためなら何だって頑張るとんだと。
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