雨降る日のキセキ
「部内トラブルがあったんだね?水原さんが先生に相談したことは誰にも言わないから、教えてくれないかな?」


そういう問題じゃないんだ、とただ首を横に振ることしかできなかった。


「顧問の先生には相談した?」


また首を振る。


本当は相談したくてたまらない。


赤坂くんが部活に来れないようにしてほしい。


でも…っ。


「…とりあえず、水原さんが部内トラブルを抱えてることは顧問の先生に伝えるね」


「…だめ。伝えないでください。お願いします…」


どうしても監督に知られるわけにはいかないんだ。


溢れる涙を必死に止めながら、何度も何度も頭を下げる。


「お願いします…っ。野球部を守りたいんです…っ」


野球部を守りたい。


千隼くんの居場所を、翔吾の大切なものを、皆の夢を、守りたい。


それが私の役目だから。


あの夏誓った、私の使命。


皆で甲子園を目指すんだ。


だから、頑張らなきゃ…っ。


私が頑張るから、だから…っ。


野球部を守りたい。


ただ、それだけ。
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