雨降る日のキセキ
だからこうしてグラウンドからは遠い渡り廊下で眺めている。


辞めてからずっと続けている日課だ。


野球がしたいとは思わない。


野球のことも千紘のことも、すべて忘れ去りたい。


自由になりたい。


過去に縛られるのはもううんざりなんだ。


「甲子園…行けるといいな」


千紘が何度も俺に話しかけてきては、しきりにその話をしてきた。


まだ甲子園を目指しているんだと知ったときは嬉しかった。


翔吾がいればあいつらは甲子園だって目指せる。


翔吾が熱い思いを持って甲子園を目指していることは痛いくらい分かっている。


だから、俺はそこにいれなくても、あいつらだけで夢を叶えてくれたらいいな。


俺はその輪に入りたくない。


もう千紘とは会えないから―。
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