雨降る日のキセキ
「こんなとこで何してんだよ」
突然背後から声をかけられ、驚いて振り向くと翔吾が立っていた。
「……関係ないだろ」
もう翔吾と話すことは何もない。
野球に関わるものはすべて消し去りたい。
最低な過去に蓋をしたいから。
もう何も思い出したくないから。
「グラウンドが見えるこの場所から、ずーっと俺らを見てたんだろ」
立ち去ろうとした俺の背中に投げかけられる言葉。
翔吾がゆっくり近づいてくるのがわかった。
「なぁ。野球を捨てたんじゃないのかよ」
翔吾が俺の肩を掴んで振り向かせる。
数カ月ぶりに視線がぶつかり合った。
久しぶりに見る翔吾の顔は見たことないくらいに険しい。
「俺は、勝手に野球を捨てたお前が許せねぇよ」
「……だったら話しかけんな」