雨降る日のキセキ
わざわざ練習を抜け出して俺に話しかけてくる意味が分からない。


「俺だって話しかけたかねぇよ!でも!」


俺の肩を掴む手に力が入る。


翔吾は唇を噛んで俯いた。


肩には指の震えが伝わってくる。


「……でも、何だよ」


見たこともない翔吾の姿に、心が激しく揺さぶられるのが分かった。


何かあったのは一目瞭然だ。


何も言わない翔吾に、胸がざわめく。


「…俺…もう、どうしていいかわかんねぇよ…」


翔吾はそう溢して力なく腕を下ろした。


弱っている翔吾を見るのは初めてだ。


あの夏だって、翔吾は打ちひしがれなかった。


常に強気で、だからこそ衝突もしたけど、弱音を吐くような姿は一切見せてこなかった。


そんな翔吾がうなだれるほどの事って何だよ…?


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