雨降る日のキセキ
そっと後頭部に触れられ、そのまま彼の胸に吸い寄せられる。


千隼くんの体温。


千隼くんの鼓動。


温かくて安心する…。


「本当にごめんな…。一人で頑張ってくれてありがとう。ツラかったよな…。ごめんな…。ホントに…」


「千隼くん…っ」


保健室で散々流したはずの涙がまた込み上げてくる。


服を濡らしてしまうからと思い離れようとしたけど、千隼くんはより力強く抱きしめて離してくれない。


「千隼くん…っ、私、千隼くんのことが好きだよ…。だから千隼くんのために頑張ってきた。私じゃ千隼くんとは付き合えない…?」


ずっとずっと言いたかった。


私は千隼くんのことが好き。


今ここで私を大切にしてくれるのは朝陽くんじゃない。


千隼くんだ。


「好きだよ…千隼くん…」
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