雨降る日のキセキ
そんな……。


でもそれがなんで殺したことに…。


「帰り道、兄貴と喧嘩して突き飛ばしたんだ。そこに飲酒運転のトラックが突っ込んできた。俺が突き飛ばさなければ兄貴は今でも生きてたんだよ」


顔を歪めて話す千隼くんは、今でも過去の呪縛が解けずに苦しんでいるように見えた。





―キキィィィーーーッッ


借りた傘をやっぱり返そうと思い、朝陽くんの後を追っていたとき、甲高くて重いブレーキ音が聞こえた。


そして、宙を舞う朝陽くんの姿が見えた。


“朝陽くん…っ!!”


ぬかるむアスファルトの上を必死に走り、倒れ込んだ朝陽くんに駆け寄る。


“朝陽くん、朝陽くんっ、朝陽くん…っ!!”


翔吾が怪我したときに重ねて見えた幻影と、全く同じ光景。


思い出した。


あのとき一緒にいた男の子……。


呆然としていて、ただ座り込んでいるだけの男の子…。


あれが千隼くん…?




「嘘だよ…」


千隼くんが朝陽くんを突き飛ばしたの…?


だから朝陽くんは亡くなったの…?
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